わかりあえない人間
この問題の闇は深いと思う。共感する人は深く共感すると思う。
ウェイ系といえばいいのか、
体育会系といえばいいのか。
そういう人達と、僕は決定的にわかりあえなかった。
先日、体育会系の職場の先輩たちに誘われ、一緒にバーベキューをした。
久しぶりだが、嫌な予感がしていた。しかし、めったにない経験なので、行った。
案の定だった。
彼らは、僕の一言一句、一挙手一投足をあげつらい、笑いのネタにする。
僕がうっかり言葉を噛んだり、ワンテンポ遅れた行動をしたりすると、すぐにツッコミが入る。
そういうのがデフォルトの世界なんだろうなと思っていたが、
改めて考えてみても、これはどうなんだろうか。
久しぶりに体感した、こういうノリの世界。居心地が悪かった。
僕は道化である。笑いの対象として見られている。
さしもの僕も他人とちょっとテンポが違うのは自覚しているが、
かといって存分に笑いのタネにするのはどうなんだ。
そこに後ろめたさを感じるものなのではないだろうか。いや、彼らはそれを感じないらしい。その神経が僕には受け入れられない。わかりあえない。
きっと彼らは友達がいる状態が当たり前で、無論いじめられたこともなかったに違いない。同類同士で群れを成していたんだろうと思う。
そう考えると合点が行く。
敵意は無いんだろう。いじめる気もないんだろう。ただ、みんなで笑い合いたいんだろう。
だが、非体育会系の僕からすれば、その態度がいじめっ子を彷彿とさせ、愉快ではない。
体験してきた前提が違う以上、仕方がないんだと僕は思う。
だけど、上記のすべてが、彼らには考えたこともないようなことなのだ。
人を存分に笑いのタネにして、純粋にみんなで笑い合いたいだけなのだ。
人の心を傷つけている自覚が無いのだ。
もちろん彼らにだって悩みはあるだろうが、僕のような奴が抱えているものとはタイプが違うだろう。趣味が無いだとか、そういう悩みはあると思う。よくわからないが。
自分の何気無い行動が笑いのタネにされて深刻に嫌な気持ちになったトラウマがひとつでもあれば、そこに罪悪感が産まれるものだと思う。
他人にそういう振る舞いをしちゃダメだと、思うようになるものだと思う。
それが彼らには無かった。
背の低い人に対して「お前ってホントチビだよなー!ワハハハ!」ってならないだろう。
太っている人に対して「お前ってホントデブだよなー!ワハハハ!」ってならないだろう。
じゃあなんで、比較的ズレてる人に対して「お前ってズレてるよなー!ワハハハ!」ってなるんだ。
僕はそのときそう思った。
経験が違う。価値観が違う。人生観が違う。考え方が違う。
僕は一息ついて酒を飲んで、酔いが回ったその勢いで彼らに訴える事を試みる。
彼らは世間話をしており、会話が途切れるのは稀である。割って入るタイミングを間違えば、無視されるか、「急に入ってくんなよ」とまたピエロにされる。そうなると気分が悪い。会話が一区切りして、3秒か4秒ほどの沈黙。今ならいけると思い、訴える。
だけど、彼らは言った。
「お前ももっと人を理解しようとする気持ちを持たないとアカンで」
まるで小中学生に説教するかのようにこちらに。
そうなるだろうな、とわかっていた。どうしろというんだ。